若手社員が育たない会社の経営者が学ぶべき3つの対策とは

こんにちは。

プロフェッショナルコーチの中原宏幸( @coach_nakahara)です!

『優秀な若手社員が育たない・・・』『順調に仕事ができるようになってきたと思ったら急に辞めてしまった・・・』

このような悩みを抱える会社、経営者は多いと思います。

実際、人材育成が上手くいかず廃業の危機にある会社も多いです。

とくに少数精鋭の零細企業では本当に死活問題です。

 

この記事では最新の認知科学をベースにしたコーチング理論をベースに『若手社員が育たない会社の経営者が学ぶべき対策』を解説していきます。

なぜ人材が育っていかないのか?その原因と具体的な対策をかつて”ものづくり業界(精密金属加工)”にいたプロコーチが解決していきます。

1.若手社員を育てる目的(ゴール)

あなたの会社で若手社員、もしくは直属の部下を育てる目的はなんでしょうか?

  • 厳しい環境下においても成長していける強い組織を作るため
  • 自分の会社、部署の生産性を上げるため
  • 技術を絶やさないよう会社を存続させるため
  • 新たな分野にチャレンジできるよう会社を若返らせるため

など様々あると思います。

実はこれが明確に分かっていて、行動に現れていれば8割は解決済みです。

 

これらは当然ですが『できたらいいなぁ』ではなく、会社の存続に関わる重要なゴールです。

ですから、そのゴール達成のために若手社員の育成に全力で取り組むという姿勢が必要になってきます。

2.仕事をする能力と指導力は別物

指導とは、ある意図された方向に教え導くことです。

すなわち今回のテーマでは『会社のゴールを共有出来る人材育成』になります。

ではそれぞれの会社がそれぞれの部署でゴール達成に必要な姿勢で若手社員の指導が出来ているでしょうか?

『何でこんなことが出来ないんだ!!』などと怒鳴り散らしていないでしょうか?

 

これはその会社が必要としている人材が育っているのかどうかで容易にわかります。

もし育っていなければ、育っても辞めてしまうケースが続いているのであれば指導者や指導方法を改善していく必要があります。

これはよく言われていることですが、『仕事ができることと優秀な指導者かどうかは別』ということです。

優秀な人、すなわち頭の回転が早い人、一度見ただけで再現、体現出来てしまう人はそれが出来ない理由がわかりません。

自分が見ただけで出来ることに何度も失敗して苦戦している原因が見えないのです。

 

普段はいい人なのに指導となるとイライラしてピリピリした緊張感が周りに伝わってしまう。また怒鳴ってしまう。

自分は丁寧に教えているつもりなのに若手がなかなか伸びない。(もちろん想いも伝わらない)

それがストレスになって若手社員はもちろん、会社全体に悪影響を与えているという残念なケースです。

3.仕事を教える人が伝えるべきこと

仕事を教える人が伝えるべきことは何でしょうか?

前任者がやっていたこと、部署やチーム内での役割は当然ですが、自分たちの仕事が果たしている機能や面白味なども習熟を加速させる上でかなり重要です。

3-1.スキル

スキルというのは言うまでもありませんが、その仕事をやっていく上で必要な技能です。

仕事はできてナンボですし、その人が機能を果たせないと本人も、また会社にとっても話になりません。

そのために最短最速で一人前に育て上げたいわけです。

 

ポイントはいくつもありますが、今回は『”しなければならない”から”したい”への転換』という方法をお伝えします。

例えばあなたが『3ヶ月である程度一人で仕事が出来るように指導してほしい』と上の人から指示されたとします。

するとあなたはどのように思うでしょうか?

  1. 3ヶ月である程度一人で仕事が出来るようにしなければならない
  2. 3ヶ月である程度一人で仕事が出来るようにしたい

どちらでしょうか?

おそらくほとんどの人が①ではないかと思います。

コーチングではhave toとwant toといいます。

 

『いやいや、自分(指導する側)がどんな風に感じたかなんて指導に直接関係ないじゃないか!』と思ったかもしれません。

実は大有りなんですよ。

子育てコーチングのセミナーなどで私はよく『子どもは親の言う通りのはならない、親のやっている通りになる』という言葉を紹介します。

これは子育て経験がある人はもちろん、ない人でも自分と親の関係性を見てみると納得していただけると思います。

『親のやっている通りになる』というのは行動ですが、その行動を取らせているのは思考です。

仕事でいえば『仕事、業務に対する向き合い方』に当たります。

あなたが仕事に対して『〇〇しなければ』という姿勢でいるとその姿勢まで伝えてしまっているのです。

あなたが『教えなければならない』と思って教えていると学ぶ側も『出来るようにならなければならない』と思ってしまいます。

 

なぜ『〇〇しなければ』が良くないかといえば『〇〇したい』に比べて生産性が著しく低いからです。

仕事での早起きは苦痛なのにゴルフや旅行はスッと起きれてしまうのはまさにhave toとwant toの違いです。

意識と無意識は1:9以上の力の差があります。

言葉で追い込んだり、感情的になってもせいぜい意識の10%の中で熱を上げているだけです。

情熱、熱量に見合った成果は望めません。

 

それより90%以上の無意識レベルでの働きかけ、動けるようになることが重要です。

そのためには指導者側が『〇〇したい』というwant toである必要があります。

3-2.果たしている機能

仕事に対する姿勢とモチベーションでしばしば紹介される寓話があります。

《3人のレンガ職人》の話

世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をしてレンガを積んでいた。

旅人はその男のそばに立ち止まって、「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねた。

「何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。 朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。

あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」

男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。

「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」

旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。

もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。

先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。

旅人は尋ねた。

「ここでいったい何をしているのですか?」

「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね。」

「大変ですね」

旅人はいたわりの言葉をかけた。

「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。

俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べていくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ。」

旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。

また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいるのに出くわした。

「ここでいったい何をしているのですか?」

旅人は興味深く尋ねた。

「ああ、俺達のことかい?俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」

「大変ですね」

旅人はいたわりの言葉をかけた。

「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」

旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。

引用元

ここに登場した3人の男は何が違うのかといえば観ているもの、すなわちビジョンが違います。

詳しい人物像の解説はありませんでしたが、同じ能力の3人だったとしてもパフォーマンス、仕事の質、生産性が大きく違うのは容易に想像できます。

仮に3番目の男が他の2人より体力がなくて、不器用だったとしても仕事の質は1番であることは間違いありません。

私たちは仕事にかかわらず”デキる人”、”デキない人”をその人の元々持っている能力としてみてしまいがちです。

ですが上記の寓話のようにゴール次第、ゴールのビジョンで大きく変わります。

『何を観るのか?』(ビジョン)がすごく重要です。

もちろん指導者がしっかり観れて、意識できている必要があります。

 

私は前職でマシニングセンタという工作機械のスピンドル(主軸)を作る会社にいました。

やっていることを物理的なレベルのみでみれば鉄を1ミクロンの精度で削っているだけです。

しかし情報的に観ていくと精度の高い動作、切削を果たす機能を持たせた製品を作っていることに気が付きます。

当時の社長から『このスピンドル(主軸)を積んだマシニングセンタでフェラーリのエンジンを切削しているんだ。この小型のはロレックスの台座部分を削り出している。』という話を聞いて私のビジョンが広がり、意識が高くなった感覚を今でも覚えています。

『僕が最終仕上げをしたスピンドルがフェラーリのエンジンを作っているのか・・・悦』と考えるとワクワクしますよね。w

どんな製品、コンテンツでも誰かの役に立つから存在し、作られているはずです。もちろん、いま存在している仕事も必要とされているから”仕事”としてあるわけです。

そこでの役割をしっかり意識することはゴールに対してすぐに、そして手軽にデキるもっとも効果的な方法です。

 

とくに最近の若い人たちは意義や意味、役割などに敏感です。

自分たちの会社、部署、仕事のビジョンを積極的に共有して効果的に使っていくべきです。

3-3.ゲーム性

大きなビジョンを共有することと同時に作業やタスクそのものに”面白さ”を見い出すことも重要です。

何かを習熟したり極めたりするために重要なのは継続して繰り返すことです。

ですが、ただ繰り返すだけでは足りず、先述したように主体性を持ってwant toで楽しめていなければいけません。

仕事の場合、自主的にするダイエットや習い事と違い、出勤すれば継続するというところはクリアできます。

ですから、より重要なのはタスクを楽しむ、ゲーム性を見い出すことです。

 

ある有名なギター講師の人が『全くの初心者たちの中でギターの上達が早い人はギターを持つのが好きな人だ』と言っていました。

私もギターが大好きで弾くのですが、全くその通りだと思います。

夜遅くて音が出せなくても楽器を持っていたいのです。w

営業であれば『人が好き、人と話すのが好き』という人は向いていますし、勝手に伸びる人でしょう。

技術職であれば機械をバラしたり、触っているだけで楽しいという感じでしょうか。

 

一方で、今そうでなくても問題ありません。

なぜそれが面白いのか?その人たちはどこに面白みを感じているのかを学べばいいからです。

つまり指導する側はこの”ゲーム性・面白み”を気付かせてあげることが重要です。

そのポイントは興味を持つ、興味を持たせるということに尽きます。

4.若手社員を育てるためにすぐにできる3つの対策

①ダメ出しから始めない

新入社員に対して話の聞き方、質問の仕方、学ぶ姿勢に問題があると感じている人は多いのではないかと思います。

それは年齢的なギャップ、価値観の違い、その社員の能力など原因は様々だと思います。

ですが、そこでダメなところ、直すべきところから注意してはよくないです。

それは遠慮するとか、こちらが我慢するということではありません。

その方が話が早いから、すなわちゴール達成が早いからです。

先ず『今の君はそういう人で、そういう姿勢なんだね』と観て、認めることです。(声に出さなくていいです)

そのあと『それはこの職場に相応しい振る舞いかな?』ということを提示する、聞いてみて気付かせればいいのです。

そこでほとんどの人は気付いて改めると思います。(一足飛びにいかないことも多いですが)

そしてあなたから仕事を教わる水準に達したこと、その成長を褒めればいいのです。

私も前職で若手への指導経験がありますが、出来ていないところ、至らない部分を見てしまいがちです。

しかしほとんどはそのことに本人が気付いていないのです。出来ていないところに気が付いていても平気なふてぶてしい人はそうそういません。

そこを相手の意識に上げて、相応しい状態に自発的に変えるよう促す。

その成長を褒めることで仕事を積極的に学ぶ姿勢に一気にアップデートできます。

②最短で習熟するためにはハマること

ものごとを最短で習熟する方法はどんなものがあるでしょうか?

もっとも強烈な方法は『夢中になること』です。

所謂ハマることですね。

例えば仕事の覚えが悪い新入社員でも自分の大好きな趣味であれば夢中になって取り組みます。

その結果、仕事を覚えるスピードとは比べ物にならない速さでマスターしていくでしょう。

能力の差もあるでしょうが、夢中になれるかどうかの方が大きく影響します。

 

では夢中になるためにはというと先述しました通りゲーム性を見つけることです。

これは自分で見つけてもいいですし、指導者が教える、気付かせて上げてもいいです。

もちろん後者の場合ですと、指導者もゲーム性を感じて楽しんでいることが前提になります。

自分の指導で若手の日々成長をしっかり観て、それに喜びを感じ、面白みを感じることですね。

③追い込めば本気になるという盲信を捨てる

私の前職でのパワハラ経験やクライアントさんのパワハラ被害の相談などを聞いていると『精神的に追い込めば本気になる』と誤解している人が結構多いのではないかと感じています。

結論からいえば意図して精神的に追い込むことは無意味でリスクしかありません。

確かに『やってやるよ!!!』とか”ヤケクソ”になって伸びる人もいます。

ですが先述したゲーム性を感じて夢中になる方が長期的に見るとはるかに安全で生産性が高いです。

ちなみに『やってやるよ!!!』とハートに火がついて一気に加速する人がその時どうなっているかというと『自分はまだまだ出来る、こんなもんじゃない!』思えています。

この方法を盲信している人はおそらく自分も追い込まれて加速した経験があり、それを後輩や部下にそのまま使っているのだと思います。

しかし厳しい指導が有効なのは信頼関係がしっかり出来上がっていることが大前提になります。

ここでいう信頼関係とは所謂、仲がいいとかコミュニケーションがしっかり取れているというだけでは足りません。

『君なら出来るよ』とその人の成長や飛躍を確信できている必要があります。

今のその人をしっかり観ることも重要ですが、その人が一人前になってバリバリ活躍する未来のビジョンを観るIQの高さが求められます。

”成長を見守ることのできる器”ともいえますね。

飲み込みが遅いことに対して苛立って、態度に出てしまっているようでは信頼関係が出来上がっているとは思わない方がいいでしょう。

『精神的に追い込めば本気になる』というのは短絡的で表面的な部分しか見れていないというのは明らかです。

【動画解説】若手社員が育たない会社の経営者がすべきマインドセット

まとめ

若手社員が育たない会社の経営者が学ぶべき3つの対策とは

  • 若手社員を育てる目的(ゴール)を意識して共有する
  • 仕事ができることと優秀な指導者かどうかは別
  • 指導者は仕事にwant toで取り組めているか?
  • ”デキる人”・”デキない人”はその人の元々持っている能力ではない
  • どんなゴール、ビジョンを持っているかでパフォーマンスが決まる
  • ゲーム性を見い出すと勝手に上達する
  • 今、ダメな部分は提示して気付かせる
  • 成長を指摘する・褒める
  • 精神的に追い込めば加速するのは盲信
  • 指導者は成長を見守ることのできる器を手に入れる

 

参考になれば幸いです。

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