私はプロコーチをしていて、ひと月に約20名ほどのクライアントさんにパーソナルコーチングと講義をしています。
体験コーチングを受講してくださる人の中にはコーチングの知識については完璧に近い人も少なくありません。
ですが、そのような人であってもゴール設定がしっかりできている人はとても少ない印象です。
その理由の一つが現状の外のゴール設定で、『そもそも現状の外って・・・』『現状の外ということは見えないのでは?』と迷ったり、悩まれている人が多いことです。
この記事では『ゴール設定における現状の外とその体感について〜楽しく成長できる場所〜』について解説していきます。
あなたが今居る現状以外の世界は全て現状の外なわけですが、どこにゴールを設定し、どのように現状の外側に対してアプローチしていくのか出来るだけ具体的に解説します。
1.現状と現状の外とは
そもそも現状の意味は、
現状
現在のありさま。今の目の前の状態。現況。 「 -を打破する」 〔同音語の「原状」は変化する前のもとのままの状態・形のことであるが,それに対して「現状」は現在の状態のことをいう〕
三省堂 大辞林より。
とあります。
コーチングにおいて現状とは『現在の状態。ありさま、あり方』ですが、これに時間の概念が追加されます。
すなわち『現在の状態ままでやってくるであろう未来も含めて現状』と定義しています。
このコーチングの現状を理解すると現状の外のゴール設定がしやすくなります。
どういう事かというと『今のままの自分にはやってこないような未来を選択すればいい』ということです。
例えば”安定した仕事が素晴らしい”という基準で公務員をしている人が『自分の大好きなお菓子作りを仕事にしたい』と考え、ケーキ屋をオープンさせるというゴールはまさに現状の外といえます。
まさに今のままの自分にはやってこないような未来を選択したということですよね。
安定した仕事が素晴らしいという他者や世間からの刷り込みを手放し、自分の大好きなことで機能を果たすという新たな基準を採用したということです。
すなわち自分の中のプログラムを書き換えたと言えますね。
その結果、自分も自分の周り、そして未来も変えることができるということです。
2.コーチングでゴールを現状の外に設定する理由
そもそもコーチングにおいて、なぜ現状の外にゴールを設定する必要があるかというと理由は2つあります。
- 過去にとらわれないため
- 無意識(ホメオスタシス)の力を使いたいから
この2つ理由が極めて重要です。
2-1.過去にとらわれない
現状の延長線上にゴールを設定してしまうと過去に深くとらわれてしまいます。
例えば子どもに『将来(10年後)何になりたいですか?』と聞くと様々な答えが返ってきます。
スポーツ選手、パイロット、ミュージシャン、医師、芸能人、プログラマー、YouTuberなど様々です。
ですが、同じ質問『10年後、何になっていたいですか?』を大人にするととても現実的な返答が返ってきます。
その違いは何かというと子どもが思うまま、感じたまま答えているのに対して、大人は現状の自分に出来そうなことを答えているからです。
私もコーチングに出会う前は全くこのように『今の自分に何ができるか?』という視点で考えていました。
これは強烈に現状にとらわれているわけです。
そして現状というのは過去のゴール設定の結果ですから、過去にとらわれていると言えるわけです。
そんな視点、基準で未来をイメージしても現状を大きく変えるような未来を描けるはずがありませんよね。
現状の外にゴールを設定するコーチングにおいては現状の自分を完全にニュートラルにして、『どんな自分にもなれる』という前提のもと考える必要があります。
ちなみに私は全然やりたいことが見えないという人には年齢や性別さえも気にしないようにアドバイスしています。
2-2.無意識(ホメオスタシス)の力を使いたいから
現状の中にゴール(目標)を設定してしまうと、所謂頑張っている状態になって苦しんでしまいます。
『自分は〇〇なんだけど、頑張って△△になりたい』という感じです。
これって現状にいながら現状の外の魅力的なものに下から手を伸ばしている状態です。
頑張ってるし、自分で自分に負荷をかけている状態ですね。
そうではなくコーチングにおいては『自分は〇〇』もしくは『自分ってこれくらい』の自分が認識している自分の水準そのものを上げて行きます。
それを情報空間、すなわち自分の頭の中に作っていきます。
ゴール設定であり、ゴールの臨場感を上げている行程ですね。
そしてゴール側の自分の視点、基準から現状を観るわけです。
すると『あっ、ヤバイ。こんなとこに居るなんて自分らしくない』と無意識が強烈に働き始めて行動してしまうのです。
感覚的に言えば、真夏の炎天下に涼しいカフェを見つけて駆け込むような感じです。
努力でも頑張っているでもなくそこに行かずにはいられないのです。
もちろん駆け込むのは涼しい快適な空間ではなく、過酷で苛烈な世界です。
そこに適応する、すなわち環境による負荷に慣れることで劇的に成長できるわけです。
ゴール設定に関しては『ゴール設定の方法〜劇的な変化を体感するコーチングの基本〜』を参考にしてみて下さい。
具体的な方法から体感にいたるまでかなり詳細に解説しています。
3.具体的に現状の外とはどこを指しているのか
ゴールは当然ですが、現状の外側に設定します。
現状の外のゴールと言った時の現状の外とは達成方法が今の自分から見えないくらい果てしない世界を指します。
もちろんそれは正しいです。
ではそのための行動はどうでしょうか?
『ゴール側の自分だったら〇〇や△△は当たり前に出来ているからそれをマスターするために毎日膨大な課題をこなすぞ!!』と負荷をかけていないでしょうか?
これは正解にもなり得るし、不正解でもあります。
ポイントは本人が自分の変化や成長を楽しもことができているか?です。
どういうことかというとぶっ飛んだ現状の外のゴールは素晴らしいのですが、あまりにかけ離れたところに一足飛びに行こうとすると無意識が強烈に抵抗します。
つまりゴールは設定したけど、
- 臨場感が湧かない
- やる気が出ない
- 行動できない
- すぐに失速してします
- 本当のゴールなのか疑ってしまう
など結局何も変わらないということになりかねません。
ではどこを目指すのか?というと、私はクライアントさんに対して『現状の外の一番近いところでいいですよ』とアドバイスしています。
ここもいくつかのポイントがあってゴール、すなわち情報空間ではイメージ出来る最大のゴールを設定し、そこを目指します。
ですが、実際の行動、つまり物理空間では小さな変化をコツコツ楽しみながら起こすのが一番の近道なのです。
なぜならやっていることそのもの、すなわちゴールまでの道のり全てが楽しい人、楽しめる人がその道のマイスターになるからです。
楽しむ人、夢中になった人が最強です。
短期的にはやらされている人、辛いと思いながらやっている人が勝つことがあるかもかもしれませんが数年単位で見ると結果は明らかです。
現状の外を考える時、have to 、want to の概念を意識するのは必須ということですね。
4.現状の外に出てどうなりたいか?を考える
冒頭でも書きましたが、私のパーソナルコーチングでは講義の時間を設けています。
テーマは自由に選んで頂いていますが、コーチングを理解して精度を上げてしっかり使って結果を出して欲しいからです。
そこで取り上げるテーマに『なぜ現状の外に出たいのか?』というものがあります。
これは理論というより使い方に直結している部分です。
答えは『その環境に適応したいから』です。
コーチングでどうなりたいのか?を明確にすると見えてくるのは新しい環境に適応したいということです。
そこに適応したいから現状の外に出て行くのです。
結構勘違いされている人が多いのが『現状でたくさん課題をこなすべき』という考え方です。
つまり”今の現状の中で自分で自分に厳しく”ということですね。
そこで行なっているのは所謂努力であり、意識的に頑張っている状態といえます。
もちろん努力は必要なのですが、無意識の力(ホメオスタシス)を使いたいわけです。
その具体的な使い方が『その環境に適応する』ということです。
自分のいる場所を変え続けるということですね。
5.圧倒的な未来と現状の外は違う
ではどこに対して適応すればいいのでしょうか?
『もちろんゴール側の自分のコンフォートゾーンですね』と言いたいところですが、そうともいえません。
これはゴールによるのですが、その人のイマジネーションの限界に近いところにゴールを設定したとして、そこに一足飛びに行けるはずがないのです。
先に書いたように、
- 臨場感が湧かない
- やる気が出ない
- 行動できない
- すぐに失速してします
- 本当のゴールなのか疑ってしまう
などクリエイティブアボイダンス(創造的回避)が働いてしまいます。
もし行動できて、その世界に一歩踏み込めたとしてもそこに適応、すなわちコンフォートゾーンにするのは難しいといえます。
ゴールと現状から次に目指す現状の外は違うことがほとんどです。
これはなにも悲観的な意味ではなく、確率論的な意味合いです。
実際には思いの外、早い段階でゴール側の人たちに自分からははるか上に思えるステージに引っ張り上げられることもあります。
ですが、そこでも重要になるのは普段から一歩先に進むことを楽しんでできているかどうかです。
その行動がゴール側の臨場感を大きく担保しているからです。
その臨場感がなければ『自分にはまだ早いので・・・』とチャンスを見逃したり、『自分にはとても・・・』と言って誰かに譲ってしまったりということが起こります。
5-1.自分にとって重要な次のステージを意識する
ゴール設定をした私たちが観るべき次のステージは一歩先で十分です。
ゴールに対して突飛な行動を狙うより、一歩でも半歩でも現状の外へ踏み出し、そこに適応する。
それ自体を楽しんで進んで行く方がはるかに早くゴールに到達できます。
習慣化、無意識化ですね。
先に書いた、情報空間ではイメージ出来る最大のゴールを設定し、物理空間では小さな変化をコツコツ楽しみながら起こすのが一番の近道なのです。
そしてどんな小さな変化に対してもしっかり意識して褒めるということです。
これに関しては真面目な人ほど『いやいや、このくらいで褒めていたらダメでしょう!!』『もっと厳しく、ストイックに行きたいです!!』とおっしゃります。
私のクライアントさんには真面目な人が多いのでこの傾向が顕著なのですが、全力で体全体を使って褒める、喜ぶように念を押しています。
理由はいくつかありますが、偉大なゴールへの道をしっかり味わいながら楽しんで進んで行きたいのです。
当然ながらその方が楽しいですし、それゆえに夢中になりやすく加速しやすいです。
またゴールのみ、最終的な結果のみにとらわれてしまうことを避けたいためでもあります。
現状の外にゴールを設定するコーチングは一般的な常識に反するところが多いと思います。
これの意味するところは私たちの感覚に反するところも多いということです。
- 些細な変化をしっかり意識して褒める
- 苦しんだ方が成長できそうだけど、思いっきり楽しむ
- 比べるのはライバルではなくゴール側の自分(今回のテーマではないですが)
などなど、感覚の反することが多いですよね。
でも、これに対してもとりあえず自分の感覚は置いておいて、このコーチングを楽しみながら実践していただけたらと思います。
それもまた、最速でコーチングのマイスターになる方法といえますからね。
まとめ
ゴール設定における現状の外とその体感について〜楽しく成長できる場所〜
- 現状とは現在の状態ままでやってくるであろう未来も含まれる
- ゴールを現状の外に設定する理由は過去にとらわれず、無意識を使うため
- 情報空間ではイメージ出来る最大のゴールを設定
- 物理空間では小さな変化をコツコツ楽しみながら起こす
- ゴールと現状から次に目指す現状の外は違う
- 現状の外へ一歩踏み出し、そこに適応する
体験コーチングに来られたクライアントさんからよく受ける質問に『やりたいことはあるけどhave to なのかwant to なのか分かりません』というものがあります。
have to とは『やりたくはないけどやっていること』で、want to とは『心からやりたいこと、止められてもやってしまうこと』です。
なぜこのことを書いたかというと現状の外、またはどのくらい現状の外に出るかを考える上でとても重要だからです。
want to とは『心からやりたいこと、止められてもやってしまうこと』つまり楽しめているかということです。
私たちは現状の外のゴールへ向かっているわけですが、その全ての道のりを楽しみたいわけです。
もちろんここで言う”楽しむ”とは現状の安易な楽しさのことではなく、
- 日々の成長
- 産みの苦しみ
- 現状の慣れ親しんだ関係性の終わり
- 人生を注ぎ込んで機能を果たす喜び
などを指しているわけです。
すなわち積極的に”楽しさ”、”ゲーム性”を見つけて楽しめるかがポイントになります。
その”楽しさ”、”ゲーム性”を喜びとすること、夢中になることでその道の達人になることができます。
ゴール達成ですね。
ですから、どのくらい現状の外に出ればいいのかというと『あなたが楽しめる過酷な環境で最も遠いところ』という回答になります。
もちろん飛び出した瞬間は『これはさすがに無理』と思ってしまいますが、そこに慣れることができたらOKということです。
それが出来ずに『何ヶ月もただ辛いだけ』『この環境では全く面白みが見出せない』という状況が続くのであれば『環境を変えてみては?』という提案をしたくてこの記事を書きました。
繰り返しますが、楽しむことが私たちを最短・最速でゴールへと導きます。
感覚的には現状から離れていて、ゴールにより近い方が早く達成できそうな気がします。
ですが、『ただ辛いだけ』になってしまうとhave to の成分が多くなり、加速できなくなります。
『自分が最も成長できる次のステージはどこだろう?』と自分に問いかけてみることも極めて重要です。
参考になれば幸いです。
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